シンガポールのカジノIRが成功した3つのポイント
日本でもカジノを含む統合型リゾート施設(IR)導入の動きが慌ただしくなって来ましたが2005年に2つのIRを導入して成功を収めているシンガポールのカジノIRが成功した3つの理由について調べてみました。
シンガポールのカジノIRが成功した3つのポイント
シンガポールのカジノIRが成功した3つの理由は以下のとおりです。
- 国のバックアップ
- カジノ依存症の対策
- 経済効果(地元及び観光)
では、上から順に見てみましょう。
シンガポールカジノIRの立役者
何と言っても初代シンガポールの首相リークワンユーの長男である。
リー・シェンロン首相の強いリーダシップのもとでカジノIRは始動しました。
「一部のメディアは『IRはカジノ建設である』と誤った印象を与えている。マカオにギャングを、ラスベガスに組織犯罪を連想させる。しかしわれわれが目指すものではない。IRは全く異なるものだ」
リー・シェンロン首相

日本の現状を表すかのようなリー・シェンロン首相のコメントですが、これは2005年にシンガポールのが当時議会で発言したものです。
観光資源が乏しかったシンガポールでは、不正防止やギャンブル依存症対策を整備した上で、2005年にカジノを解禁し、セントーサ島とマリーナベイ・サンズの2つのにカジノIRを作りました。
そのうちの一つ、マリーナベイ・サンズは、プールや庭園を備える船のような形の屋上が、マーライオンと同様、シンガポールを象徴する存在感を放つています。

次に、挙げられる立役者は…
米国のカジノ運営会社のサンズです。
このカジノIRにサンズが約5千億円を投資してシンガポールに進出したのは、今から10年前の2010年です。
埋め立て地に、ホテルやシアター、博物館などのほか、4万5千人以上を収容できる展示会議場も建設しました。

サンズのジョージ・タナシェビッチ社長は「施設は新しく次々と進化している。エネルギーの詰まった場を日本でも提供したい」と力を込める。
ジョージ・タナシェビッチ社長
しっかりした政治家のリーダーシップに基づき、シンガポールの象徴となったマリナーベイサンズを建設したサンズの運営力の二つがシンガポールのカジノIRが成功した一つ目の理由と言っていいと思います。
次のポイントは…
厳しい入場規制とギャンブル依存症対策

シンガポールのカジノ解禁により厳しい入場規制を作りました。
その基本的なポイントは以下のとおりです。
厳しい入場規制
- 21歳未満は入店禁止
- シンガポール人は24時間ごとに150シンガポールドル(約1,2000円)を払う
- カジノの面積は1万5千㎡以下
- ゲーム機器2500台以下
- カジノ内のATM設置禁止
- カジノのための違法な貸金行為禁止には最高9年の懲役刑や、12回のむち打ち刑もある
日本でのカジノの入店に際してはシンガポールと同じように外国人旅行客は無料で、日本人は有料になる方向で検討されているようです。
そして、入場規制と同じく大切な要素となるのがカジノギャンブル依存症対策です。
このギャンブル依存症対策にシンガポールは国の諮問機関を作るなどして国家ぐるみで対応しました。
ギャンブル依存症対策
サンズでは、カジノディーラーやスタッフのうち約500人がカジノ依存症を早期発見する特別な訓練を受け、ギャンブル依存症になってないか来場したゲストを確認しています。

カジノ場の四方八方を見ると、監視カメラが数千台に及んでいます。
カジノ導入後ギャンブル依存症は増加えたのか?
IRの導入後、観光客と税収の増加で潤ったのと引き換えにシンガポールはギャンブル依存症が増えたのかどうかが一番気になるところです。
3年ごとにギャンブル依存症を調査

シンガポールでは3年ごとに、国民と永住権保持者のうちでギャンブル依存症が疑われる者の割合を調査しています。
その結果によると…
カジノのオープンより5年さかのぼる2005年に行われた調査時には4.1%だったギャンブル依存症の割合が、2008年には2.9%にまで落ち、さらに2011年には2.6%に下がっています。
その後、2014年の調査時には0.7%までに落ち、最新の2017年の調査結果では0.9%と上昇しましたが、その率はわずかなものに留まっています。

この数字を見る限りでは、カジノのオープンがシンガポールにギャンブル依存症が増えたとは考えずらいようですね。
それではなぜこんにギャンブル依存症の患者の数が減ったのか疑問が残ります。
なぜギャンブル依存症が減ったのか?!
自国民への規制がまず一番に挙げられるます。
具体的な規制について見てみましょう。
シンガポール国民と永住権保持者には、国内の2つのカジノへの入場料が課せられることは前述したとおりです。
そして、カジノへの出入り禁止措置、または入場回数制限が、本人および家族の申請により可能となっているのが面白いですね。
シンガポールの英字紙のストレーツタイムズによると、2017年9月末に本人または家族がカジノへの入場禁止を申請した人数は25,000人超に上ります。
また、約47,000人が債務未決済の破産者または生活保護受給者であることを理由にカジノへの出入りを禁止されています。
2016年度に国民と永住権保持者が支払ったカジノ入場料の総額は1.3億シンガポールドルで、2013年度の1.7億シンガポールドルから21%減少しており、国民のカジノ離れが見られているようですね。
さらに、シンガポール政府は、2005年4月にIR導入を発表した4ヶ月後の同年8月、社会・家族開発省の下に国家賭博依存症評議会(NCPG)を置きました。
この評議会を通じて国民のギャンブル依存対策に本格的に乗り出していました。
NCPGが具体的に担っている仕事は以下の3つです。
- 国民に対するギャンブル依存症対策
- カジノへの出入り禁止規則の個人への適用
- ギャンブル依存のリサーチ
依存症対策に取り組むNPO「BGSS」への同紙のインタビューではこの理由について:
ギャンブラーには入場料のかかるカジノより、借り入れ可能な非合法のオンラインカジノのほうが好まれるため、そしてカジノは本人や家族による入場禁止措置が取られるためではないかと推測しています。
依存症対策に取り組むNPO「BGSS」
また、2008年にそれまであった保健省管轄下の依存症専門クリニックを国家依存症管理サービス機構(NAMS)という組織に改編し、ギャンブルを含む、アルコール、ドラッグなどの依存症全般の治療対策を強化しました。
その他にもシンガポールには、民間のリハビリ施設、NPO法人など、依存症対策・治療の受け皿が揃っています。
シンガポールの合法ギャンブルは2010年に開業したカジノだけではなく、それ以前から競馬やロト、スポーツ賭博なども存在していました。
カジノ導入に伴い、包括的なギャンブル依存症対策がセットで提示され、ギャンブル依存症の率が下がったという調査結果が間違いなようですね。
経済効果(地元及び観光)
シンガポール観光客数が2倍
シンガポール観光客数は2009年の約970万人から2017年の約1740万人へ約8年間でほぼ2倍になっています。
外資のカジノ運営会社に対しての懸案事項としてお金が海外へ流れるとの声がよく聞かれますが、シンガポールの場合、シンガポール以外の国にお金が流れているとは必ずしも言えないようです。
サンズの場合、シンガポールの地元企業から年間500億円以上の物資を調達し、地元調達率は92%を誇っています。
そんな中でシンガポールの地元企業であるお菓子工場の場合、 「モントルー・パティシエ」というお菓子工場は1995年に開業しました。
すごいことにカジノIRがシンガポールに進出する前は10人程度の会社でしたが、現在は従業員数100人を超える優良企業へと変貌しています。
カジノIR開業前の2010年の売り上げは約350万シンガポールドル(約2億8000万円)だったが、昨年は約1300万シンガポールドルに達したという。
もう1社紹介すると、
窓ガラスの製造・管理業者のダイアモンド・グラスです。
開業時の2006年には2人しかいなかったが、現在は約200人を雇用し、2つの工場が稼働しています。
まとめ
やはりシンガポールがカジノIRが成功した理由は冒頭でも掲げた、この3つの理由であることは間違いないと思います。
- 国のバックアップ
- カジノ依存症の対策
- 経済効果(地元及び観光)
シンガポール国民にとっては、カジノIRの開業により、観光客の増加、地元企業との取引増加、そして税収の増加しました。
さらにギャンブル依存症対策が厚くなり、大きな恩恵を得られたと言えると思います。
その一方で、カジノがセントーサ島とマリーナベイベイサンズにしかないのでマカオやラスベガスのようにカジノの選択肢が少ないので僕から見てシンガポールのカジノのマイナスポイントのような気がします。
もっともシンガポールは日本の淡路島と同じくらいの大きさで、そこに2つのカジノがあるだけでスゴイことかも知れませんね。
そう考えると日本全土で3つのカジノIRしか許認可しないとの日本の方針にちょい疑問が残ります。
どちらにしても、日本のIRの導入によりシンガポールのように日本の国民への恩恵が大きなると良いと思うのですが…